お産(分娩(ぶんべん))とは、痛みをともなう規則的な子宮収縮(陣痛(じんつう))が始まってから、胎盤(たいばん)が娩出(べんしゅつ)されるまでのことです。通常、陣痛(じんつう)が10分ごとになったときを分娩(ぶんべん)開始としています。多くの妊婦さんは自然に陣痛(じんつう)が起こり、お産になります。お産に際して、産婦さんのお手伝いや陣痛(じんつう)を和(やわ)らげるように協力するのが、助産師さんです。分娩(ぶんべん)の経過中に母体に異常が生じた場合や、胎児が元気でなくなった場合などは、何らかの処置が必要になります。このような処置は産科医の管理のもとに行われます。分娩(ぶんべん)経過の異常を速(すみ)やかに発見し、できるだけ正常に戻るように、母児ともに安全に経過するように管理することが、助産師と産科医の役割です。
妊娠末期になるとほとんどの人が不規則な子宮収縮を経験します。これを分娩(ぶんべん)に至(いた)る本当の陣痛(じんつう)と区別して前駆陣痛(ぜんくじんつう)とよびます。痛みをともなうこともともなわないこともあり、続く時間も間隔もまちまちです。普通は自然に収まりますが、繰り返すときはちょっとからだを休めてみましょう。それでも子宮収縮が収まらないときや強くなるときは病院に相談しましょう。
陣痛(じんつう)が始まると、胎児は子宮口に向かって圧迫され、子宮口が開き始めます。子宮口が3〜5cm程度開くまでは比較的ゆっくりですが、それ以降は急速です。子宮口が完全に開いた状態になることを子宮口の全開大といいます。胎児を娩出(べんしゅつ)しようとする陣痛(じんつう)に、母体のいきみが加わると、胎児が母体から娩出(べんしゅつ)されます。続いて胎盤(たいばん)が娩出(べんしゅつ)されます。
お産の経験のない妊婦さんは初産婦、経験のある妊婦さんが経産婦です。一般に、初産婦の分娩(ぶんべん)所要時間は12〜16時間、経産婦では5〜8時間です。分娩(ぶんべん)経過にはかなりの個人差があり、初産婦で30時間、経産婦で15時間までは正常範囲とされています。
【破水とおしるし】
赤ちゃんを包んでいる膜が破れて子宮の中の羊水が外へ流れ出てくることを、破水と呼びます。分娩(ぶんべん)の途中に起こることが多いのですが、陣痛(じんつう)が始まる前に起こることもあります。お水がたくさん流れることもありますがあわてずに病院へ連絡しましょう。おりものに血が混ざってピンクや茶色になることがあります。これはおしるしといって、お産が近い証拠(しょうこ)といわれています。あわてずに、陣痛(じんつう)が始まるのを待ちましょう。ただし出血の量が多いときやいつまでも出血が続くときは、子宮の中から出血しているかもしれません。かかりつけの病院・診療所に相談してください。
【分娩(ぶんべん)誘発と計画分娩(ぶんべん)】
予定日を過ぎてもいつまでも陣痛が始まらないときや、破水したのに陣痛が起こらないときなどに、子宮口を開く処置を行ったり、子宮収縮薬を使って分娩を人工的に進めることがあります。これを分娩誘発といいます。母子の安全を守るために選択される重要な処置のひとつでもあります。また、分娩誘発は日時を決めて分娩を計画的に進める場合にも行われます。
分娩(ぶんべん)の経過中に胎児の元気が乏(とぼ)しいと診断されたり、母体の健康に危害がおよぶと考えられる場合は、医師による介入が必要になります。医師から帝王切開術や分娩(ぶんべん)誘発をすすめられたときには落ち着いてよく説明を聞いて、納得したうえで処置に臨(のぞ)みましょう。産科医だけでは対応が難しいようであれば新生児専門の医師がいる病院に転院をすすめられたり搬送されたりすることもあります。
【無痛分娩(和痛分娩)】
出産を間近に控(ひか)えた妊婦さんにとって、出産の痛みを考えることはとても怖くて不安なことです。耐えられないと思う人もいるでしょう。お薬を使って痛みを和(やわ)らげ、できるだけ少ない痛みで分娩(ぶんべん)させることを無痛分娩(和痛分娩)といいます。薬剤の種類も投与方法もさまざまですが、麻酔が深くなるほど陣痛(じんつう)が弱くなって分娩(ぶんべん)が長引くといった欠点もあります。分娩する施設で行っているのか確認して、医師やご家族とよく相談して決めてください。